「何のために」「何を遺すか」:コーチングで見つける、経験が導くリーダーのパーパスとレガシー
経験豊富なリーダーが直面する「次なる問い」
長年にわたり組織やチームを率い、豊富な経験と実績を積んでこられたリーダーの皆様は、その道のりの中で多くの「答え」を見つけ、実践されてきたことと思います。しかし、ある段階に達すると、あるいは時代の変化の中で、これまでの「正解」だけでは捉えきれない、より深い問いに直面することがあります。それは、「私は何のために貢献したいのか」「この経験を通じて何を遺したいのか」といった、ご自身の内なるパーパス(存在意義)やレガシー(後世に残したいもの)に関する問いかもしれません。
これまでの成功体験や培ってきた知識は、確かに大きな力です。しかし、それが時に、次に進むべき方向を見えにくくしたり、過去の「こうあるべき」という固定観念に繋がったりすることもあります。VUCA(Volatility, Uncertainty, Complexity, Ambiguity)と呼ばれる予測困難な時代において、経験は羅針盤となり得ますが、同時に新たな地図を描くための柔軟性も求められます。自身の経験を未来への推進力に変え、真に貢献したいことを見出すためには、深い自己探求が必要となるのです。
コーチングがパーパスとレガシー探求にもたらす価値
このような、経験豊富なリーダーが自身の内側に向き合い、未来へのビジョンを明確にするプロセスにおいて、コーチングは非常に有効なアプローチとなります。なぜなら、コーチングは「答えを教える」のではなく、「問いを通じて本人の中から答えを引き出す」ことを目的としているからです。
経験豊富なリーダーは、既に多くの知識と経験を持っています。必要なのは、外部からの情報や指示ではなく、ご自身の中に既に存在する「真の願い」「譲れない価値観」「未来への可能性」に光を当てることです。コーチは、まさにその光を当てるための「問い」を投げかけ、安全で対話的な空間を提供します。
例えば、コーチングセッションでは、以下のような問いを通じて探求を深めることがあります。
- これまでで、あなたが最も情熱を傾け、時間を忘れて没頭した経験は何でしたか? その時、あなたは何を感じ、どのような価値を生み出していましたか?
- あなたのこれまでのキャリアや人生において、最も大切にしてきた価値観は何ですか? それは、どのような形で表現されてきましたか?
- あなたが周囲の人々や社会に対して、最も大きな影響を与えられたと感じる瞬間はいつでしたか? どのような影響でしたか?
- もし時間、お金、制約が一切ないとしたら、あなたはどのような活動にエネルギーを注ぎたいですか?
- あなたが、次の世代や社会に「これだけは遺したい」と感じるものは何ですか? それは、具体的な形を伴いますか、それとも目に見えない何かでしょうか?
- 過去の成功や失敗の経験から、今のあなたにとって最も意味深い学びは何ですか? それは、これからどのような形で活かせるでしょうか?
これらの問いは、過去の経験を単なる思い出としてではなく、現在の自分を形成し、未来への可能性を示す重要な手がかりとして捉え直すことを促します。
経験を『点』から『線』へ、そして『未来への軌跡』へ
コーチングのプロセスを通じて、自身のこれまでの経験という『点』が、特定の価値観やパターンに沿った『線』として繋がっていくことに気づくことがあります。それは、ご自身ならではのユニークな強み、情熱の源泉、そして自然と惹きつけられる貢献の領域かもしれません。
ある元役員の方は、コーチングを通じて、長年培ってきた組織運営の経験が、実は「人が内発的に輝ける環境を創ること」への強い思いに根差していたことに気づかれました。そして、現役時代のポジションでは実現しきれなかった、NPO法人での支援活動へと貢献の軸足を移されました。これは、単なる知識やスキルを活用するだけでなく、ご自身の根源的なパーパスに沿ったレガシーデザインの一例と言えるでしょう。
また、別の企業研修講師の方は、コーチングを受ける中で、ご自身の豊富な経験談そのものが、受講生にとって単なる情報ではなく「生き方」を示すヒントになる可能性に気づき、従来の知識伝達型の研修から、より内省と対話を促すファシリテーションスタイルへと変化させていきました。ご自身の経験知を「遺す」方法として、語る内容だけでなく、語り方、そして相手からの引き出し方に意識を向けるようになったのです。
深まる自己理解が拓く新たな貢献のカタチ
コーチングによって自己理解が深まることは、パーパスやレガシーの明確化に留まりません。それは、日々のリーダーシップの実践においても、より本質的な関わりを可能にします。部下や後輩への指導・育成においても、「何を教えるか」だけでなく、「この人が自身のパーパスを見つけ、可能性を最大限に発揮するためには、どのような問いかけが必要か」という視点が生まれます。
また、多様なバックグラウンドを持つ人々との関わりにおいても、自身の経験を一方的に押し付けるのではなく、相手の経験や価値観への深い敬意を持って耳を傾け、共に探求する姿勢が自然と生まれます。コミュニティでのネットワーキングにおいても、単なる情報交換に終わらず、互いの「何のために」「何を遺したいか」を共有し合うことで、より深い繋がりや協働の可能性が生まれるでしょう。
経験知を未来へ繋ぐ羅針盤として
長年の経験は、確かに大きな資産です。しかし、それをどのように活かし、未来へ、そして次世代へ繋いでいくかは、常に問い続け、磨き続ける必要があります。コーチングは、経験豊富なリーダーがご自身の内なる声に耳を傾け、真に貢献したいこと、遺したいものをクリアにするための強力な羅針盤となります。
このサイトは、コーチングを通じてリーダーシップを高める体験や実践を共有するコミュニティです。ぜひ、皆様のこれまでの経験や、コーチングを通じてご自身のパーパスやレガシーを見つめ直した体験を共有してください。そして、多様な経験を持つリーダー同士が、互いの「何のために」「何を遺すか」を探求し合う深い対話を通じて、新たな学びと貢献の可能性を共に切り拓いていきましょう。